● (仮称)金沢杜の里街づくり委員会
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対談者:  金沢杜の里街づくり委員会
    委員長 瀧 憲三 氏
    副委員長 松尾 俊一 氏
    委 員 中野 優 氏
    事務局長 市村 銑治 氏
  聞き手  
    NPOの杜 四尾 泰
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  四尾  司会をやっています私が昭和60年より、この地区のまちづくりに関わってきたこともありますので、あえてお聞きすることに照れもありますが、まず、金沢杜の里街づくり委員会が発足した経緯についてお尋ねします。
   金沢杜の里は、昭和60年より土地区画整理事業により宅地開発した地区ですが、この事業は、金沢大学が都心部から本地区に隣接した角間地区に総合移転することが決定したことが契機となりました。
 里山に大学が総合移転するわけですから、大学教職員や学生にとって必要となる利便施設がまったくない地区となってしまいますので、本地区は、大学門前街という位置付けで、計画的な市街地整備を行うことが課題にまちづくりを進めてきたわけです。
 昭和61、62年度でまず街づくりの指針となる「金沢杜の里街づくりの道標」を石川県、金沢市、金沢大学の協力のもと作成し、これを目指してまちづくりを進めてきたわけです。
  市村  「金沢杜の里街づくりの道標」は本地区の街づくりの方向性と具体的な提案を示したわけですが、これを実現していくためには、いくつかの手法、すなわち地権者などが納得できる範囲でアメとムチを検討する必要があります。
 具体的には、土地区画整理法上の手法と事業上の手法、用途地域・地区計画などの規制上の手法が挙げられます。
 こうした手法体系を積み上げ、地権者に説明し、実行してきたのが待ちづくり委員会です。
  四尾 街づくり委員会が例えて言うならば、ルートを提案し、地元説明し、同意を得た上で、レールを敷くといった活動を行なってきたということですね。
 ただ、昭和60年といえば、土地区画整理事業の先進地と言われている金沢においても「街づくり」を事業に取り込んでいる地区はなかったはずですので、初めての試みとして地権者の反応はどうでしたか。
  松尾  地権者の同意もさることながら、事業を実際に行なっている土地区画整理組合理事会の総意にしなければならないということが最初の課題でした。
 土地区画整理事業とは道路や公園・水路などの公共施設の整備と宅地整備が目的の事業ですから、公共施設のデザインやその土地の上に何を、どのように、建てていってもらうかなどといった誘導は、ただでさえ地権がからむ難しい事業であるのに、その上さらに課題を上乗せすることとなり、抵抗もなかったといえば嘘になろうかと思います。
   私は若松・鈴見地区に隣接した地区で以前にやはり土地区画整理事業を行なっていた経験から、単なる土地を整備する土地区画整理事業だけでは、不足であると考えてきました。
 ですから、街づくりを土地区画整理事業の一環として行なっていくことを理事会の総意としていくために、組合設立当初から全国の先進事例を理事に見てもらうことをしてきました。
 川崎市の新百合ヶ丘、山口台をはじめ、新潟県、千葉県、埼玉県、北海道など全国を回り、こうした活動の中で意識を固めていったわけです。
  中野  徐々に理事会の中での街づくりの意識が芽生えた頃、名称は変更いたしましたが、街づくり委員会を組合員の中から地域の推薦で発足しました。
 街づくりの必要性を組合員に浸透させていくこと、街づくりの手法を実行に移していくことなどが主な事業だったと思います。
 理事会が視察に行ったのと同様に、組合員にも視察会に参加していただきました。
 また、先ほども金沢は土地区画整理事業の先進地であると言われましたが、言い換えれば、それほど土地区画整理事業の施行地区が多いということであり、その中で本地区の宅地化を早めるためには、個性を打ち出さなければならないという組合員に説明してきたわけです。
  四尾  街づくりの必要性を理事や組合員に納得のいくまで説明し、そして実現されてきているわけですが、今後はどのような活動となっていくのですか。
   本地区では街づくり事業として、幹線道路沿いについては3mの壁面後退を地区計画で指定し、その部分に組合事業として植樹帯と舗装を行いました。
 幹線道路の歩道幅員が4.5mありますので、合計7.5mの歩行空間を確保し、道路の並木と壁面後退部分の植栽の両側から囲まれた空間を提供しています。
 また、一般宅地では、塀・垣を道路から1m後退を地区計画で指定し、その部分を組合事業として植栽しています。
 こうした緑豊かな歩行空間を組合事業として整備してきていますが、今後はこの緑の管理を誰が、どのように行なっていくかがまず問題となります。
 そのためにも、土地区画整理組合が解散したあとを引き継ぐ組織を現在検討中であり、NPO法人化したものを考えています。
  中野  その他にも、建築申請時に街づくり委員会の承認がなければ金沢市が受付けないといったシステムを採用しており、地区計画では網羅できない詳細な誘導を行なってきました。
 このシステムを組合解散後も新たな組織が引き継いで継続していく必要があろうかと思います。
  松尾  挙げればきりがありませんが、地区内には留学生交流センターが建設されており、地区と大学生、地区と企業・居住者だけではなく、地区と留学生といった交流も今後活発化させていかなければならないと考えています。
  市村  事務的なこととはなりますが、若松・鈴見地区土地区画整理事業では、公園や歩行者有線道路などの公共施設上に多くのモニュメントや道標、記念碑を設置してきましたが、どうしても地元管理の公共施設上の占有物件として取り扱われることとなり、この管理者としても組織が必要となります。
  四尾  本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございました。どうしてもこれは話しておきたいと思うことがありましたら、お話ください。
   本地区は建設大臣賞をはじめ、石川県、金沢市の景観関連の表象を数多く受けていますが、造った段階だけでなく、この街づくりの水準を維持していくとともに、さらに向上させていくためにも、新しい組織を発足し、努力していきたいと考えています。